
—-なるほど。その中でも、2日間で、Bound To BreakとラストのHeat Of The Nightだけはかぶっていたのですが、そこに何か意味があるんじゃないかと僕は思っていたのですが…。
柴田:そうですね。新旧色々なファンの方と、新旧色々な曲を楽しみたいという思いと共に、どこかに振り返るだけでは満足できない…。これが25周年のために解散していたバンドが集まるなら別なのですが、やっぱり今やっているバンドですから。そして、そのかぶっている2曲っていうのは、たまたまなのですが言われてみると、やっぱり僕らが今動く原動力になるものの中から出てきた曲だと思いますよね。だから、曲選びの時に、そういう形で締めることが僕らにとっては特に難しいことなく、ただ自然だったという感じなのですが…。
—-これが今のANTHEMだと。
柴田:そうですね。そこまで見てもらえれば、一通り企画としては収まりがいいかな、という感じですね。
—-なるほど。特にその「プロローグ1&2」のライヴでこだわったところってありますか? 例えば、音響面だったり、衣装だったりとか…。
柴田:残念ながら、清水デビューの頃の衣装はもうさすがに清水も僕も持ってないですし、ひょっとして持っていたとしても着られないでしょう…(笑)。
—-息ができない衣装とか…(笑)
柴田:まぁ、みてくれに関しては、こだわりたい人間が自分の中の遊び心でこだわればいいんじゃないかと思いましたね。僕はたぶん黒のジャケットかなんかを着ていたので、ジャケットを着て出ましたけど。まぁ、あとは特に衣装にこだわることはなかったのです…。何よりも、自分達で生み出した曲だけれども久々にやる曲があったり、初めてやる曲があったり。そこだけ異質になるのも嫌だし。2部はライヴレコーディングにしていましたが、だからと言って、ただ単に綺麗に演奏して録音する、っていうのでは、ベストアルバム(CORE)の時にやったスタジオライヴと特に変わらなくなってしまいます。お客さんがいて、ライヴをやっているのを録るわけですから、曲に入り込むことだけ考えようと。音響はPAのほうに任せて僕らは余計なことを考えないで、やる曲だけに全てを集中して、聴きたい人にはじっくり聴いてもらい、ノリたい人はノッてもらい…。という感じでした。今日はライヴレコーディングがあるから、今日の場所は此処だからってことも全然関係なく、成功しても失敗しても、一発一発全力投球っていうんですかね。それがすごく自然にできるようになってきたのが、「プロローグ1&2」を終えられた一番の原因かも知れないっていうふうに、後で思いましたね。だから、凄く楽しかったっていうのは多分そういうことなんだと思うんですよ。あー、入り込んで演奏した!っていう。まーちょっと初日の1部は入り込み過ぎたのですが(笑)。
—-結果、楽しかった、という気持ちになったのは、事前の入念なリハーサルであったりとか、ミーティングだったり、そういうのがあったからこそかな、と想像するのですが。
柴田:だといいですね。全員、自分に課題を持って追い込みましたから。高い山に登ってみたら気持ちよかった!みたいなことかもしれないですよね。
—-この2日間を聴いて、改めてANTHEMってやっぱり物凄くタイトだなって思ったんです。そこのところは何か気にされていたりはしますか?
柴田:もちろん、きちっと演奏しなきゃ、と基本思ってやってはいます。ただ今回は、間違わないようにしなきゃとか、リズムをぴったり揃えなきゃとか、そういう意識ではやっていません。IMMORTAL以降、ライヴでは特にね。ずるずるの演奏をしようというのではないんですよ。何かすごいものを産むためには、自分が自分でなくなるというか、自分がその曲に取り込まれるぐらい入り込んで演奏する。その中で、多少のずれがあるとか、ミスがあるとかというのは、僕はライヴとしては全くありだと思いますから。それが聴き苦しいほどになるのは、ミュージシャンとしてはいかがなものかとは思いますが…。このメンバーでもう大方10年やっていますから、彼らが何を考えてどういうプレイをしているのか、というのは、どこにいても聴こえるので、そういうことでもどんどんどんどん触発されていきます…。でも、すごくタイトだった、というのは嬉しいですね。僕らは、そういうことは100%意識しないでやっていましたので。
—-ANTHEMって、例えば3~4分の曲の中に、実はそれぞれのパートに音数が多いと思うんですね。でも、実際ライヴでは、それらが、それぞれ音像がくっきりしていて、でもとまっていて、走ることもなく、もたつくこともなく、というのをあの「プロローグ1&2」ではすごく感じたんです。それは、リハーサルあってのことなのかな、ってずっと考えていたんですよ。
柴田:どうでしょうね。もちろん、日々上手くなりたいとか、もっと良いアンサンブルはないか?というような思いは音楽をやっている限り消えることはないです。ですが、それにこだわるだけではなくて、その向こう側に僕はすごくROCKなものを感じるんですよね。僕らの曲も、アンサンブルなどの成り立ちも、緻密なプログレバンドのようではないので、完全再現をすることよりも、もっと強烈なインプレッション、インパクトをライヴで出さないと、なによりプレイしていて僕らがつまらないんですよ。
だから、何年か前にやった曲をまたやる場合、その時とフレーズとか、、何もかも全く同じっていうのはつまらない。そういった事もリハーサルに入る前のひとつのテーマでした。たとえばその時に興奮したら、必要以上にフィルが多くなったり、ベースがずっとチョーキングしていたり、リードギターがスタジオ版と違うなんていうのは当たり前で…、もちろんその曲のテーマになるようなものは崩さないのですが。言い方が悪いのですが、曲はもうある、進行も全部決まっている。「さぁ、それを好きなようにやろうや…、どうなるのかなあ?」という感覚ですね。勿論それでもバラバラにならないとは思いましたよ。僕がリハーサルの度に言っていたのはそういうことで、そこには結構厳しかったですよ。「こんなの何年も前と同じじゃん」っていう…。自分達がいつも新鮮にやる秘訣っていうんですかね、自分達が「もっとできる」「もっと面白くできる」って思いながら楽曲にトライして、新たな自分を発見していかないと、いつかの自分達のコピーをするなんていうのは馬鹿げている、という感じがします。
—-それが、曲にのめり込む、ということと、ニアリーイコールなのでしょうか。
柴田:そうですね。例えば、会場の大きさ、お客さんの空気、会場の温度もそうですよね。もしくは、当日のサウンドチェックのフィーリングとか。全く同じ機材で同じ人間が弾いても、音は微妙に違うとか、そういうことがあるように、同じものはないんだっていう感覚なんですよね。
—-あと、その2日間、GYPSY WAYSしかりHUNTING TIMEしかり、言ってしまえば20年以上の曲が、かなりウェイトを占めていましたが、それぞれが現代のANTHEMになっているな、と思ったんですよね。
柴田:そう言っていただけると、リハーサルを繰り返す甲斐もありますね(笑)。
—-作品自体は同じだけれど、曲にのめり込んで、ライヴでは同じことをやらず…。その一瞬一瞬でのパフォーマンスに魅力がある、というのが、今のANTHEMなんだろうな、とすごく感じました。
柴田:ありがとうございます。結果的に、まぁ清水が「俺はこう弾く」、本間(大嗣/ds)君が「俺はこう叩く」、(坂本英三<vo>が)「俺はこう歌う」っていうのが、現状一番自然なんですよね。だから、楽曲を下敷きにするので全く違う曲になることはないんですが…、そこでみんなで寄って必死に単なるコピーするというのではね…、それを見せるというのは、すごく失礼なような気がします。バンドが現在を…、最ものめり込んでいる姿を見てもらう、っていうのが、ライヴなんじゃないかなと思います。
—-それが、ANTHEMが毎回ライヴに人を引き寄せる秘訣、というか、魅力なのかな、というふうに思ってきましたね。
柴田:いずれにせよ僕らはそういうやり方しかできませんよ(笑)。反省すべきところはいっぱいあるのですが、楽しく、自分達が率先してのめり込む、です。そういった時に極端に演奏が破綻したりしないようなリハーサルをやればいいんだと思うんです。
—-今、その、反省、という言葉が出てきましたけれども、振り返って「わー、失敗したなー」というところが、「プロローグ1&2」にあるとしたら、どういうところですか?
柴田:敢えて言うならば…。例えば倍の時間リハーサルに使っても、4倍使っても、初日っていうのは思っている以上に力が入るんですよね。いきなりVenom Strikeやってみたところ、きついんですが「こういう精神状態で、こういう考え方でステージの板の上に上がるのって、やっぱり絶対気持ちいいよな」って思ってやっていたら、「プロローグ1」の1部を飛ばし過ぎて(笑)。ちょっと矛盾するかも知れませんけど、「もうちょっと演奏ちゃんとやればよかったな」(笑)と思うところもありましたよ…。初日の1部が終わった後に楽屋でみんなと話していたのですが、他の3人も「いやー、僕はあれがありましたよ」「これがありましたよ」と言っていましたが、特に深刻ではなかったです。初日の最初30~40分はやっぱり難しいんですよね。でも、そういうことを考えないでガーッといったのも、結局さっき言ったような一期一会というか、そのライヴはたった一回だけ、同じものは二度とない、という感覚だったんだと思うので、反省というか…、まぁ最初は全員力が入るということです…。
—-あと、ANTHEMのTwitterのフォロワーの方より質問がありました。「それぞれの第1部第2部で、音がちょっと違う気がした」と。「敢えて変えたのかそれとも空耳なんですかね?」とのことなのですが…。
柴田:音が違う?え、それは「プロローグ」…?
—-えーと、「1」か「2」か特に指定はしていなかったのですが…。意図的に何か、例えばPAを調整したとかありますか?
柴田:どうでしょう…、PAの人間が変えたかどうか僕はわからないのですが…。変わって聴こえたのだとすると、やっぱり1部は、特に「プロローグ1」ですが、久しぶりのコンサートの頭1時間ぐらいってことで、かなり飛ばして力が入っていたり…。あとは、テーマが清水の初ライヴってことで、僕なんかは個人的にものすごく思い入れが当然あるし、清水は当然そうでしょうし…。あと、2部はライヴレコーディング、アルバム1枚、っていうことで、全く性格の違う、プレイヤーサイドから言うと、もう本当に信じられないほど内容の違うものが二つ組み合わさっている企画なので、そういうことでプレイにも影響したのかもしれませんね。